【背負い投げ】のコツについて全日本強化選手が語る

2021年8月10日

土井健史流の背負い投げ

こんにちは!土井(@takeshidoi)です。
皆さんは柔道と言えば、【背負い投げ】といったイメージはありませんか?
ですが、実践で効果的な技は背負い投げで無い場合が多く、背負い投げという技は僕自身が現役を通じて一番難しい技だと思います。
じかし、それとは別でTVでは背負い投げで投げているシーンを多く見るため憧れていたりする人も多いのではないでしょうか?

また、現役を通じて分かったことは背負い投げは難しいが、体格が小さくてもハンデを覆せる技である!
しかし、その反面、怪我のリスクがとても高い!
具体的に言うと、背負い投げの選手は“肘・肩・腰・膝”の怪我は日常茶飯事になると言ってもいいんじゃないですかね?
そのため、正しいフォームで幼少期の頃から何度も基礎から練習しておく必要があり、大人になってもそれは変わりません!

今回はとあるご縁から、小学3年生の子供に1対1の「背負い投げ指導」の際に動画を撮って「背負い投げが入れない」・「コツが分からない」・「難しい」人に役立つ動画をこの記事に載せました。

また、筆者の僕も現役の全日本強化選手なので、柔道の技に関しては自信があります。
めったに技術を漏洩させない全日本強化選手の動画なので、そこだけは期待してください!(笑)

先にどのような背負い投げを指導したかというと、背負い投げの際に大切な動作の1つ【背負い投げの足の動き】を中心に指導しました!

指導したのは【後ろ回り捌き】の背負い投げ

“なぜ後ろ回りの背負い投げを教えるのか?”

それについて答えると、まず僕は後ろ回りの足さばきが得意で「背負い投げが入れない」コツを教えてほしいと言われたら、背負い投げのコツを聞かれたら迷わず後ろ回り捌きを教えている!

何故なら基本の「前回り捌きの背負い投げ」では無く、後ろ回りの背負い投げが全日本級の戦いになると必要になると現役を通じて感じているから!
※実際に下記の動画のように子供に【後ろ回りの背負い投げ】を教えている。

「土井健史による背負い投げ解説(足の動き)」の動画

しかし、大学生や社会人になってからの習得は神経系などの観点から、幼少期から様々な技をしていなければ年齢を重ねてからの習得は難しいのが現実で、社会人で実業団の選手でも幼少期に“後ろ回りの背負い投げをしていない”ため感覚が分からないし、できない。
本当はできるようになりたい!といった選手を多く見てきました。
※僕は幼少期から後ろ回り捌きを練習していました。(前回りも)

もちろん道場によって様々な方針はあると思いますが、幼少期や成長期にこういったこと入り方があるのだな!と感じるだけでも何かいい影響があるのではないでしょうか?

はっきりいって背負い投げは1番難しい技

背負い投げの難しい、入れないという人がよくいるのに対して僕が思うのは“僕が全日本強化選手として戦っている中で1番難しい技は「背負い投げ」だと思う”ということ。
また、相手に経過されると入れない技であるため、背負い投げの上手な選手ほど足技や他の技が上手だったりするのが現実。

何が言いたいか?というと、背負い投げを上手くなりたいなら他の技を練習するといい!ということ!
実際に僕が試合して思うことは背負い投げにこだわり過ぎると、試合のリズムが狂い背負い投げを狙っているのが相手にバレます(笑)
というより、背負い投げという技は1番狙っているのが分かる技なので背負い投げの上達を考えるなら、「小内刈り、小外刈り、大外刈り」といった技を練習するのを推奨します。
僕自身、背負い投げは得意ですが、足技はもっと得意なので上のレベルに行けば行くほどこういった部分が大切だと思います。

学校の授業では【背負い投げ】は初心者に危険で向いていない

【背負い投げ】のコツについて全日本強化選手が語る その1

“学校の授業で背負い投げを教えるには?”

そう考えた時に柔道を長年経験して感じることは、背負い投げという技は受け身を取りにくいし、頭から落ちる可能性も高く、技を入る方が下手であればあるほど危険な技。
柔道の初心者にははっきり言って、棄権で難しい技であるため柔道の授業だけでは安全な身体のつくり・技の入り方を身につける指導の時間が足りないと僕は思う。
それに今思えば、僕も何回も頭から落ちていますね(笑)

また、「柔道=背負い投げ」のイメージがありますが、怪我の可能性が高い技なので教育現場には向いていないと僕は思っていて、具体的に怪我のしやすい部位は「膝・腰・肘・肩」であり、特に体のできていない子供や柔道を経験していない子供にとっては「受け身」も難しい技じゃないのかな?と僕自身思っています。
この考え方には賛否両論はありますが、教育現場では安全が第一で行い、背負い投げを学びたければ町道場で習えばいいのでは?なんてことも思っています。

ちなみに僕が動画でしている足の動きは後ろ回り捌きと呼ばれる入り方なので、初心者の方はこの「後ろ回りの」背負い投げに関しては受け身がいつの感覚と違いますので、教育現場の指導としては危ないしできないからやめてくださいね!
※普通の背負い投げは「前回り捌き」といった基本的な足の動き。

中学校の先生が教える授業では「一本背負い」が良いと思う

背負い投げよりも、片手で入れる技である「一本背負い」を僕は推奨します。
まずは一本背負いで上から投げられて背中をつくという感覚と、受け身を覚える必要があるのではないか?考えたりします。
(あくまでも土井の意見です)
理由としては僕自身4歳から柔道をしていますが、中学校1年生の頃に背負い投げを強引に入った際に左肘を怪我し(左肘の軟骨分離)、手術しています。

【背負い投げ】のコツについて全日本強化選手が語る その2

練習中に負った大怪我です。
(2005年の夏)
この結果、怪我の治癒後も1年間近くは背負い投げを入ると非代理肘が痺れるといった後遺症があったりしました。
このように幼少期から柔道をしている僕でも大きな怪我をするので、安全を重視した教育現場では身体のできていない子供であれば安全面を重視するなら一本背負いでもいいのではないかな?と僕は思います。

まあ、柔道の醍醐味である背負い投げを学べないかもしれない欠点はありますけどね!

中学の中体連の柔道ルールでは両膝をつくと「反則:注意」

中学校の柔道大会では年齢制限によって禁止とされているルールがあり、小中学生は両膝付きの背負い投げは掛けてしまうと、技の効果に関係なく「注意」が宣告されます!

因みに、筆者の土井健史も2007年の全国中学校柔道大会の決勝戦で両膝注意の宣告を受け、決勝で負けました。

しかし、このルールと矛盾しているのが海外の柔道では幼少期から両膝をついて背負い投げを使ったとしても「反則:注意」が宣告されるというのは無く日本と海外では安全の観点が違うのかな?と思うことがあります。
良くも悪くもこのルールは安全を苦慮している反面、指導者が「片膝ならOK」だから片膝をついて背負い投げを入るように指導しているのは現役選手としてはよく分からない矛盾なんですよね。
皆さんはこの“背負い投げは片膝ならルール的にOK理論”についてどう思いますか?

※片膝をついて背負い投げを入らせる理由は、テコの原理で低い姿勢の状態から背負い投げを入ることによって自分より大きな相手を投げやすくなるからという理由が多い。

今回指導に行った大阪の柔道場【増田道場】さん

※増田道場の成年の部(中学生から社会人まで)の出稽古写真
【背負い投げ】のコツについて全日本強化選手が語る その3

土曜日の夜20:30〜21:30の中学生~一般(大人クラス)に参加した時の写真です!
基本的に子供たちはこれより前の時間帯で練習していますが、大人の部では大人になってから柔道を始める選手たちが増えているみたいなので、真剣に柔道を学びたい方は1度稽古を見てはどうですか?

ちなみに今回指導に行ったのは大阪の阿倍野区美章園にある増田道場さんの子供さんに背負い投げの指導に行ってきました!

【背負い投げ】のコツについて全日本強化選手が語る その4

543-0003
大阪市阿倍野区美章園1-9-19
天王寺から阪和線で1駅下った美章園駅から徒歩1分という好立地の武道場で、子供たちが一生懸命稽古に取り組んでいます。

僕自身も時々、成年(社会人)の部に稽古に行かせてもらい柔道をしています。
師範である増田先生も人柄がよく明るい道場なので今後の活躍に期待!

最後に背負い投げは様々な意見はあると思いますが、この「背負い投げ」の記事が少しでも皆さんの役に立てれば幸いです!
それでは皆さん時間を大切に良い1日を!