無くならない柔道の誤審
こんにちは!
柔道-73kg級の土井(@takeshidoi)です。
柔道界は【誤審】が起こるたびにメディアに悪い様に注目されガチなのですが、今回パリオリンピックでも-60kg級の永山竜樹選手の誤診問題が大変なニュースになりました。
実際問題、“待て”の合図があったのにも関わらず長時間締め続けていたということが問題となっており、その結果締め落とされて一本負けという結果になったという内容です。
僕ら元アスリートから見るとわかるのですが、袖車締めという技は一回手が入ってしまうと外すのに時間がかかるんですね。
なので、相手が故意に続けたか?という論点もありますが、そもそも手が離れにくいということもあります。
2024年のパリオリンピックの誤審として大きく注目されましたが、一番悔しいのは永山竜樹選手ですので、僕たちが口を出すことは特にないんですけどね。
また、他にもビデオ判定のジェリーが導入されるきっかけになった、有名な誤審で代表的な試合はやはり先輩であり、全日本柔道男子、天理大学監督、現絵本作家の“2000年のシドニー五輪+100kg級決勝【篠原信一 VS ダビド・ドゥイエ(フランス)の試合】が一番有名ではないでしょうか?
内股透かしで投げた技が「相手のポイント」になった試合で、柔道の誤審が明確になったのが間違いなくこの大会。
(※また、この大会以降に柔道競技で初めてビデオ判定(柔道のジェリー=審判員を監督するもの)が導入されました。)
ビデオ判定というのは審判員が“□”のようなジェスチャーを指で行い、他の動画を撮影している場所で改めてポイントの判定を行うという制度です。
実際にこれで技のポイントになったり、技のポイントが取り消されることも何度かありました。
やはり人が判断している以上、ビデオ判定があるとはいえ“誤審”と呼ばれる問題は何度も起こるでしょう。
また、こういった背景を踏まえて、なぜ誤審が起きるのか?
柔道の誤審の原因の2テーマに目を向けたいと思います。
柔道の誤審は無くならないのか?
“柔道の誤審は無くならないのか?”
と聞かれると、“僕は一現役選手の意見として”誤審は無くならない“と思うし、柔道の技のポイントは人によって意見が違うと思います。
講道館の誤審のような事件が起こる前にルールをあらかじめ何パターンを作ったとしても人が審判している以上何回も起きると予想できますしね。
僕が思う理由は下記の3つ
- 現役選手と審判員の感覚が違い、審判員も長く現役を離れていること
- 小中高(年齢)で反則の規定が変わること
- IJFの国際審判員と日本の審判員は全く違うこと
皆さんは僕の意見を聞いてどのように感じましたか?
僕は特に不思議なのが、トップレベルになると袖口は大目に見てもらえ、IJFの国際大会では当たり前のように審判員は見ているのに国内の小中高の予選などの大会であれば“指導”が早い、それなのに大舞台の試合になると最後の決着は“技によるポイント”を優先と言って、指導が加えられない。
僕はこれらの矛盾が現役選手として不思議でありません。
僕自身、袖口を握ったテクニックを試合で使うことはありますが、高校生に教える機会があっても“袖口指導”で負けることもありますので教えることもできません。
こういった柔道競技特有の謎もありますが、これもまた柔道競技の発展と更なる進化という意味でも受け入れていく必要があると素直に感じますね。
柔道のビデオ判定は果たして正しいジャッジなのか?
昨今のビデオ判定がどの競技にも反映される中、ビデオ判定をすることにより更なる混乱が起きる場合や審判員の感性によって指導や反則技の見方まで変わってきている試合が多いのが柔道の現状。
僕自身、現役選手として感じるのが現役を長く離れた審判員の技の投げに関する感性と、現役選手が少し違うなという点。
また、日本人と外国人の技に対する考え方の違い。
“畳に背中を付けさせたらポイント”なのか?
“投げたことにより背中が畳についたらポイント”なのか?
こういった部分も人によって感じ方が違うでしょう。
また、具体例を出すと、東京五輪-90kg級代表の向井選手が3回戦で負けた技は僕の感性では“体を捨てながら技を掛けた”と感じるが、審判員はこれを相手の技ポイント(技あり)と宣告した。
こういった感じ方の違いもあるので【誤審】というのは一言で決めつけられないし、難しい問題度と僕は感じました。
誤審が起きないように今後はカラー柔道着の導入
東京五輪-66kg級決定戦(東京オリンピック内定戦)では講道館杯全日本体重別選手権-60kg級の決勝戦の誤審をもとに国内の大会で初となるカラー柔道着を導入。
丸山城志郎(ミキハウス) VS 阿部一二三(パーク24)の試合
東京五輪-66kg級決定戦(東京オリンピック内定戦)は12月13日講道館で行い阿部一二三が勝利。
この結果によって柔道の東京五輪代表が全員決まる。
正直に言うと、様々な誤審がある中この大会だけでなく、これからは様々な大会で色分けがはっきり分かるようにカラー柔道着を導入して欲しいな!と思ったのは僕だけでしょうか?
地方の大会からカラー柔道着を導入することで誤審が減り、柔道着屋さんも利益を生み、全員が喜ぶと思うんですけどね!
泣くのは洗濯をする人ぐらいでしょう(笑)
※ブルー道着は最初は色落ちするため。
国際大会のようにカラー柔道着がもっと普及してほしい
柔道の国際大会では誤審を防ぐためにも98年からIJFがカラー道着を導入していましたが、日本は「清い心の象徴」とする白柔道着を伝統としていました。
本当に選手のことを考えるなら、伝統よりも柔道をしている人達の精神では?他にも大切なことがあるのでは?と選手目線で感じます。
実際にブルー道着を好んで着る選手・指導者も増えているため、伝統よりも実際に柔道着を着ている人達の意見も取り入れてほしいと素直に感じました。
また、今後は各地方の小さな大会でも柔道の誤審が少しでも無くなるようにカラー柔道着も増えてほしいですね。
2020年-60kg級の講道館杯兼全日本体重別選手権決勝の誤審
米村克真選手(センコー) VS 小西誠志郎選手(国士舘大学)の決勝戦です。
小西誠志郎選手の完全に決まった抑え込みがブザーの間違いから合わせ技で一本となりましたが、審判員の取り消しにより残念ながら技ありとなってしまいました。
原因はその前に米村選手が技ありを投げのポイントで先取していたので、間違えてスコアを小西選手にスコアしていたことが原因ですね。
そして、再度抑え込みの状態からスタートする試合になりましたが、完全に決まっていた試合からでは無く首を決めない状態からのスタートであったため、残念ながら逃げられてしまい世間をにぎわせるニュースとなった。
後日の報道で「審判の不手際」となりましたが、新型コロナウイルスの影響により全国大会で試合を審判する機会も少なかったのも原因。
こういった誤審を想定し、ルールを作っておく必要性を感じた事件。
これに対して、全日本柔道連盟が取った施策が講道館杯初の同時優勝
結局この大会は誤審と認められたため審判に処分が下され、2人が同時優勝となりました。
結果はともあれ小西選手もこれで報われますね。
全日本学生柔道体重別団体優勝大会の国士舘大学と日本体育大学の準決勝戦の誤審
釘丸選手と大吉選手の試合で、後ろ袈裟固めで抑え込みのはずが抑え込みの宣告がされず、「待て」となり、その後審議の結果抑え込みの状態からスタートした試合ですが、逃げられポイントにならず。
これは柔道競技をした人に分からないのですが、試合の流れで抑え込むのと1度間隔があいて抑え込むのでは抑え込みの固めが大きく変わってしまいます。
これも審判員に処分が科されました。
皆さんはこの抑え込みの状態をどのように見えますか?
ちなみにこの寝技の抑え込みの正式名称は“後袈裟固め”です。
国士舘大学出身の加藤博隆選手(千葉県警察)の得意技でもある“加藤スペシャル”と呼ばれる寝技の形です!
二つの誤審に共通しているのは【寝技】の誤審
この2つの大会の誤審に共通しているのは寝技、しかも良くも悪くも国士舘大学の選手です。
柔道経験者は立ち技が優れている人が多かったが、寝技の知識は乏しいということが少しずつ見えてきたのではないでしょうか?
僕自身も社会人になってから柔術を学び始めましたが、柔道歴25年の現役全日本強化選手でさえ寝技は奥深いな!と感じますので、これからは誤審と呼ばれる対策に寝技の講習を入れてみるのも面白いかもしれませんね!
柔道の審判員のライセンスと現状について思うこと
柔道の審判員にはクラス分けがあるのを知っていますか?
SABCとランクがあり、ランクのライセンスに応じて審判員ができる大会が限られていきます。
また、柔道の審判員ライセンス獲得には修行年数と講習、筆記試験や実技試験などがあるため、決して楽に取れるものではありませんし、お金もかかります。
ちなみに柔道の審判員はS・A級ライセンスが上位で、S>A>B>Cとなっている。
A級ライセンスを持つ審判員は日本の大きな全国大会の審判員ができます。
ちなみに誰でも講習を受ければ取れるようなものにC級ライセンスもありますが、講習は当然受ける必要はあります。
たしか誤審が起きた講道館杯などの大会の審判員はたしかAライセンス審判員またはSライセンス審判員だと思われる。
(※国際大会(IJF)の審判員はまた、別の審判員資格が必要。)
このようにライセンスによってできる審判員の場所が違うのですが、この審判員は、ほぼ名誉というか、ボランティアみたいなもので大きなお金がもらえるわけでは無いのを知っていましたか?
また、小さな大会では“交通費やお弁当も出さない連盟”もあり審判員は善意のようなものなのです。
何が言いたいか?というと、こういった背景を知った上で審判員の人は誤審があった時は、注目を良くも悪くも浴びるということを知ってほしいです。
最後になりましたが、誤審と騒ぎ立てるよりもその大会で戦っている選手たちをもっと見てほしいなと純粋に感じました。
締め:筆者である元柔道日本代表の土井健史について
僕自身、2021年まで柔道の全日本強化選手として世界で戦っていましたが、やはり誤診というか不可解な判定はたくさんありました。
これらは周りがあーだこーだいうよりも選手が一番心に染みてます。
悔しすぎて寝れない日々もありましたし、後悔もずっとあります。
特にオリンピックの舞台で経験した-60kg級の永山流選手なんて僕は現役が被っているので、凄いストイックな選手で人間性も優れているのも分かっているので、余計同情します。
しかし、これは僕らが言うことではなく、本人の問題なので、本人をこれからも応援したい!それだけです。
また、僕の実績や人間、今何をしているか?については、下記を参考にしてください。
ちなみに現在は大阪市都島区で工務店の経営をしており、柔道の実績等につきましては下記に記載しています。
全く柔道の素人が書いている記事よりはよっぽど信用できるんじゃないでしょうか?
それではこの辺で!時間を大切に良い1日を!
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